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2022年10月の長期優良住宅認定基準のみなおしとは?

 

いつもご愛読いただきありがとうございます。
北陸新築リフォーム補助金サポートナビ運営局です。
今回のコラムは2022年10月に予定されている長期優良住宅認定基準みなおしについて解説いたします。

1. 長期優良住宅とは
2. 長期優良住宅の技術基準の概要とは
3. 2022年10月の基準みなおし注意点(戸建て木造住宅の場合)
4. 2022年10月頃に長期優良住宅の認定手続きをする場合の注意点
5. まとめ

また、お客様への説明に活用できる資料も提供しておりますので、
ご希望の方は下記URLよりダウンロードいただければと思います。

1.長期優良住宅とは

長期優良住宅とは、戦後日本の好景気を下支えしてきた住宅業界の、「つくっては壊す」消費型の社会から、「いいものを長く大切につかう」ストック型の低炭素社会へと転換することを目的として平成19年頃に政府が唱えて制度化した住宅です。認定を取得して建築すると建築主にはさまざまな税制優遇が与えられ、平成21年6月4日より施行されました。

国交省の統計報告では、令和2年度に新築された戸建住宅の約25%にあたる約120万戸が認定を受けて建築されており、新築戸建住宅では4戸に1戸の割合で長期優良住宅の認定を取得しています。

出典:国交省HP 長期優良住宅の認定状況について(令和3年3月末時点)

大手ハウスメーカーの多くが加盟するプレハブ協会の報告書※によれば、令和2年度は木質系戸建住宅の77.1%が長期優良住宅の認定を取得して建築されており、大手ハウスメーカーの基本仕様として既に定着していると考えて良いと思います。
※プレハブ住宅完工戸数実績調査 及び生産能力調査報告書 2020 年度実績より

県別の認定戸数はばらつきがあり、北陸はどちらかというと認定戸数は平均以下、直近の統計である令和2年度の場合、全国で100,503戸の新築戸建て住宅が長期優良住宅認定を受けて建築されていますが、富山県の場合は新築住宅5173戸のうち認定取得住宅は544戸(10.5%)、石川県は6749戸のうち660戸(9.7%)、福井県3961戸のうち513戸(12.9%)と、平均よりかなり低い状況です。特に石川県は大手ハウスメーカーによる建築割合が比較的高い県なのですが(市場のおよそ40%以上と推測)、それにしては認定戸数9.7%はかなり低く、大手ハウスメーカーで建築しても長期優良住宅にはしない層が一定量あると考えられます。北陸は多雪地域のため、すまいの耐震性向上のためには太平洋側よりもより一層、構造躯体を強固にする必要があります。例えば、真冬の2月頃、朝起きたら屋根には150㎝の積雪が。直後に大地震に見舞われたら!?・・・それでも安心して住み続けることができる住宅を想定しているのが北陸における長期優良住宅です。そのため、建物を強固にするための材料費プラス増が避けられません。北陸では耐震等級2を取得するためには、耐震等級を考えない住宅と比べると、建築費がそれなりにアップするという現実があり、技術力があるにもかかわらず実際には普及がいまいち進んでいない理由かもしれません。

ところが2022年10月から、長期優良住宅の認定基準(後述)のうちの「4.省エネルギー性」の技術基準が従来の省エネ基準適合レベルからZEH水準レベルまで一気に引き上げる内容に見直しされることになりました。背景となっているのは「2050カーボンニュートラルの実現」という政策目標です。今建築される長期優良住宅は維持管理されつつ長期にわたって使用される予定ですから、2050年には当然既存建築物として残っているはずであり、2050年には「ZEHは一般的※」とする政府目標を提示しているならば、一般住宅よりも質の高いであろう認定長期優良住宅は今すぐにでもZEH水準で建築しておくことが肝要という考えからくるもので、技術基準見直しについての協議開始から半年たらずで2022年10月施行を前提として調整するという急展開となりました。ハウスメーカー側の準備が間に合うのかが謎ですが。。。

ともかく今後、長期優良住宅の建築時のハードルは耐震性だけではなくなりました。長期優良住宅対応が可能としている工務店は2022年10月見直し後の新しい省エネ基準の内容を自社仕様と比較し、断熱仕様の見直しの必要性を確認することをおすすめします。
そこで、まず長期優良住宅の技術基準には何があるのかまず確認してみましょう。

2.長期優良住宅の技術基準とは

長期優良住宅は『長期にわたり良好な状態で使用するための構造および設備を有している住宅』とするために、下記4分類の技術基準で構成されており、主に住宅性能表示制度の基準(等級)を準用して定められています。

1. 劣化対策(構造躯体を長期使用とするため木材が腐りにくくする工夫)
要件:劣化対策等級3+構造別の追加措置(木造は点検口設置等)
2.耐震性(もし地震があった場合でも住宅への損傷をなるべく低減できること)
要件:耐震等級2以上 →【見直し】仕様規定(壁量基準)の場合は耐震等級3
3.維持管理・更新の容易性(構造躯体に比べて耐用年数が短い設備配管を清掃、点検、更新できる前提にしておく)
要件:維持管理対策等級3(専用配管)
4. 省エネルギー性(断熱性を高め冷暖房負荷を軽減)
要件:断熱性能等級4→【見直し】断熱性能等級5かつ一次エネルギー消費量等級6

※【見直し】2022年10月1日施行により性能向上必須となった部分です
※技術基準について詳しくは住宅性能評価協会の「長期優良住宅認定制度の概要についてpdf」参照
ただし2022年10月見直し前の内容のままです。10月以降に改定版公表?

3. 2022年10月の技術基準みなおしの注意すべき点(戸建て木造住宅の場合)

前述の4分類の技術基準を解説しつつ、見直し後の基準とその注意点を解説しましょう。

1. 劣化対策(構造躯体を長期使用とするため木材が腐りにくくする工夫)
劣化対策等級3+構造別の追加措置(木造は点検口等)


【解説】
この項目での見直しはなし
外壁の軸組等は通気構造、GL+1mまで防腐処理、土台はひのき、浴室にユニットバス、脱衣室の床と壁の防水措置としてビニールクロス+クッションフロア、基礎高400以上+ねこ土台、天井断熱の場合は小屋裏換気計算等、床下点検口と天井点検口の設定。防腐処理と小屋裏換気以外は標準で対応済の工務店様が多く、それほど難易度は高くありません。

2. 耐震性(もし地震があった場合でも住宅への損傷をなるべく低減できること)

【見直し後の基準】耐震等級2以上、ただし構造計算(許容応力度計算)の場合に限る。尚、太陽光パネル等を搭載する場合はその荷重も検討すること。もし耐力壁を構造計算ではなく壁量計算で検討する場合は耐震等級3以上を求めること。なお太陽光パネル等を搭載する場合は屋根の仕様にかかわらず「重い住宅」とすること

【解説】
構造の検討時には建築地に応じた積雪を考慮し荷重を加味していきますが許容応力度計算(構造計算)によるか仕様規定(壁量)で検討するか、主に2通り方法がありますが、ここでは構造計算の場合で記載します。
耐力壁の位置と量と位置の是非を構造計算により検討しつつ、床倍率(床組みと小屋組の水平構面)も検討、横架材(梁成)も構造計算等により検討すること。基礎も構造計算により配筋量とスパンを検討、ダブル配筋や基礎地中梁が出現する点などが、建築確認申請のみの耐震等級対応なし住宅とは大きく異なりコスト増に直結する部分です。今回の見直しで、耐震等級2で認定取得できるのは今後は構造計算のみとなり、仕様規定の場合は安全側で耐震等級3以上でやっと認定取得できる=強化されました。

また、太陽光パネルが載る場合はいずれの場合もその荷重を構造の検討に含めること、例えば仕様規定では屋根の仕様にかからず一律「重い住宅」で判断することとなりました。
今後は、建築主にあらかじめ太陽光パネルを載せる意思があるかどうか、後付けは耐震性を損ねる点をよく説明する必要があります。
たとえば引渡し後、リフォーム等で太陽光パネル屋根に後から載せた場合は、長期優良住宅の認定取得時より屋根の荷重が重くなり、当初の耐震等級の検討条件が悪い方に変わるので、もし再検討の結果、必須の耐震等級が取得できなくなったら、認定取り消しとなるケースもありえるからです。実際、太陽光パネルは重いです。長期優良住宅の屋根に何か載せるなら、新築設計時の今、決心する必要があることを説明しましょう。

3. 維持管理対策(構造躯体に比べて耐用年数が短い設備配管を清掃、点検、更新前提にしておく)
【基準】維持管理対策等級3 (専用配管)

【解説】
この項目での見直しはなし

基礎に専用配管を直接埋め込まない(スリーブ管活用)で大体クリアする。
なお、長期優良住宅の理念である「長期間使用」は耐震等級2以上の構造躯体で建築すれば叶うものではなく、そもそも日々のメンテナンスと修繕の実行が必須不可欠であり、認定申請時には維持管理計画書(アフターメンテナンス)を提出し、建築後30年間は建築主が主体的に当該住宅の保守点検と必要な修繕を履行することを認定主体(富山市長など)に約束する住宅であることの建築主への説明不足が多いと思います。車の車検と同じく、すまいは定期的に計画的に点検と修繕が必要である点、点検は建築主の日常点検がスタートである点を説明した方が良いと思います。下記パンフレット推奨

 

 

出典:国交省HP 長期優良住宅のページより 長期優良住宅の認定を受けたみなさまへ
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk4_000006.html

4. 省エネルギー性・・・断熱性能等級4(窓と断熱材)のみだったものが
【見直し】2022年10月から断熱性能等級5かつ一次エネルギー消費量等級6

【解説】
長期優良住宅の技術基準は平成21年開始の制度です。当時は省エネルギー性といえば平成11年基準の省エネルギー等級4(現在の断熱性能等級4の仕様規定相当)は品確法の住宅性能表示制度温熱等級の中で最高グレードと位置けられ、それより前の「新省エネ」と比較するに用いられてました。特に平成21年頃の住宅エコポイント制度開始により一気に市場に認知されたと記憶しております。
ただ、平成21年頃当時の等級を10年以上そのまま用いていた点は確かに放置しすぎです。結果、今までは断熱性能等級4(UA値0.87※)の省エネ基準適合レベル、あまり意識なくとも達成していた長期優良住宅の省エネ性の規定が、断熱性能等級5(UA値0.60※)、かつ一次エネルギー等級6も加わったことで暖房機器や給湯器等の住宅設備まで審査対象が広がり、省エネ基準より▲20%以上削減が必要なレベルすなわちZEH水準住宅(北陸ではZEHOriented同等)レベルとなりました。なお太陽光の有無は長期優良住宅の場合は不問です。同タイミングで基準みなおしとなる、「低炭素建築物の認定制度」では太陽光発電システムが必須となります。

※5地域の場合の基準値で記載しています

4. 2022年10月頃に長期優良住宅の認定手続きをする場合の注意点

認定長期優良住宅は建築地の行政庁が認定の主体です。各市町村が窓口となり、建築着工前に認定申請書の窓口への提出が必要です。
例えば建築地が富山市内の場合、窓口となるのは富山市役所で認定してくれる人(認定の主体)は富山市長の名で認定します。但し射水市などは確認申請と同じく富山県(富山県知事)が所管行政庁になりますが、認定申請書の受付窓口は射水市です。
建築地ごとの所管行政庁の検索はこちら
https://www.hyoukakyoukai.or.jp/seino_nintei/gyosei.php

建築主は(主にその代理者が)着工前に、建築地に応じた所管行政庁に「長期優良住宅認定申請書」を提出=認定申請してから着工するのが認定住宅としてのルールです。
着工後に申請しても認定してもらえません。

「長期優良住宅認定申請書」には登録住宅性能評価機関が技術基準について内容審査済であるという証明書「確認書」等※を添付して申請するのが一般的です。

認定手続きのためにはまず「確認書」等を入手しておく必要がありますので、登録住宅性能評価機関※に「長期優良使用構造等である旨の確認であること」の申請を行い設計図書について審査を受けましょう(長期優良住宅の技術的審査)。
そして、その登録住宅性能評価機関への長期優良住宅の技術的審査申し込みが2022年9月末日受理であれば見直し前の旧基準で認定申請可能、受理が2022年10月1日以降であれば見直し後の新基準(ZEH水準必須)が必須となる予定ですので注意しましょう。
※別紙施工スケジュール参照

出典:一般社団法人住宅性能評価協会
長期優良住宅法改正概要説明より
https://www.hyoukakyoukai.or.jp/chouki/kaisei221001.html

もし、ZEH水準でなない仕様(現行基準)で長期優良住宅の認定を取得したい場合、9月末日までに長期優良住宅の技術的審査の審査機関での受理が必須です。一般的に、提出資料に不足があった場合は受理に至らないので、9月30日ギリギリに申請するのは避けましょう。

もし、何等かの不備で、旧基準の予定が新基準での認定申請が必要になってしまった場合は、ZEH水準相当まで断熱仕様を変更し、さらに一次エネルギー消費量等級6の判定のために暖冷房・給湯・換気・節湯水栓・照明の仕様についての資料を元に一次エネルギー消費量計算を実施し、審査に追加提出する必要があります。追加費用対応しているうちに1週間~2週間は過ぎると思います。地盤改良や基礎工事(着工)を遅らせることになると思います。3月末引渡しの請負契約の場合、基礎の着工遅れは影響が大きいですよね。北陸で長期優良住宅などの認定住宅を建築する場合は早め早めに準備しましょう。

5. まとめ

2022年10月以前と以降の認定長期優良住宅は、基準みなおしにより省エネ性においてまったく違う建物であることはお判りいただけたかと思います。
であるからこそ、今から長期優良住宅の認定を取得する際に「設計住宅性能評価を活用した一体申請」で長期優良住宅の認定を取得することをおすすめします。メリットは上記4つの技術基準の等級が何であるかがはっきり評価書に書いてあるので性能が分かりやすいからです。

2050カーボンニュートラル対応済の温熱等級を持つ長期優良住宅であることが一目でわかる評価書があると、例えば後世、当該住宅を住み継ぐことになった方にとっても有益な評価書となるはずです。
2022年度以降、耐震性の確保と同じくらい、ZEH水準以上か以下かは今後の国策対応の分かれ道となる性能ラインです。これまで等級で評価してもらったことが無い工務店様も、自社の現在の標準の断熱性能(UA値)がどれくらいなのか、今のうちに一度確認してみることをおすすめします。
長期優良住宅の認定取得にかかるご相談、住宅の性能に関するご相談は、北陸新築サポートナビまでお問い合わせください。

また、長期優良住宅(新基準)等のZEH水準住宅のメリットをお客様に説明する際にそのまま活用できる資料も配信中です。
ご希望の方は下記URLよりダウンロードいただければと思います。

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