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北陸新築リフォーム補助金サポートナビ運営局です。
今回のコラムはこの10月に施行されます「住宅性能表示制度における多段階の上位等級の引き上げ」とりわけ断熱について解説いたします。
これまでも地球温暖化を背景に、住宅の省エネ性能についての施策が打たれております。
今回2022年10月施行の断熱等級6・7の新設で家づくりはどう変わるのか?
具体的な新設内容、それを受けて工務店様にどのような影響があるのか?
どう乗り切ると良いのか?お客様にどのように提案していくのが良いのか?
詳しく解説していきますので、工務店の経営者、責任者の方はぜひご覧ください。
【目次】
1. 直近の脱炭素の動き
2. 新しい住宅性能表示制度における基準とは?
3. 断熱性能等級5・6・7の仕様例
4. 2022年10月以降、高断熱住宅市場が一気に拡大
5. 工務店様のとるべき道とは?
6. 住宅価格高騰への対応は税制優遇、金利優遇・補助金の活用を
7. まとめ
コロナ渦以降、非常に目まぐるしく、世界情勢が変化しています。
地球温暖化を引き金に加えて
コロナショック、脱炭素ショック・脱ロシア依存、異常気象ショック
そしてそれらを引き金に
メタルショック:経済が急回復し、世界的に需要が旺盛
半導体ショック:半導体不足で減産
ウッドショック:木材高騰、供給遅延(日本の木材自給率は37.8%(2019年))
ミートショック:入国制限などによる大手不足で生産や物流が滞る。
と様々なリスクにさらされています。
特にここ数年の気候科学の発展により、人間活動によるCO2排出が、台風・豪雨災害に
どれだけ影響を及ぼしているのか定量的に分かるようになってきているようで、
例えば気象庁気象研究所等の研究によると、2018年の西日本豪雨では、大雨の発生確率は、地球温暖化の影響がなかったと仮定した場合と比較して、約3.3倍になったと示されており、その後の2018年7月の猛暑は、人為的なCO2の排出なしには起きなかっただろうと言われています。
<2018年7月に発生した西日本豪雨による経済損出>
経済損失額:100億米ドル=1兆4,000億円(1$140円で換算)
損害保険支払い額:130億米ドル=2兆2,000億円(1$140円で換算)
※(出典)東京大学未来ビジョン研究センター教授 高村ゆかり氏 講演資料等
また、政府は2020年10月の2050年Carbon Neutral(カーボンニュートラル)の表明以降、その実現に向けて、グリーン成長戦略を策定・具体化、第6次エネルギー基本計画、パリ協定に基づく成長戦略として長期戦略を策定してきました。
※(出典) 2022年7月8日 『混迷する国際エネルギー情勢と日本への影響』(一財)日本エネルギー経済研究所 常務理事 山下ゆかり氏講演
日本は成長戦略の柱として経済と環境の好循環を掲げ、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを宣言し、
中期目標として、2030年度に、2013年度比46%減を目指すと宣言されていることは既に皆さんご存知のことと思いますが、エネルギー起源CO2のうち、環境省が中心となって対策を進める家庭部門においては、2013年度比約66%と大幅に削減することが必要と報告されています。
※2017年4月13日 2015年度(平成27年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について 環境省・国立環境研究所
ここで重要なことが2つ。
1つは家庭部門での削減が他の部門を大きく上回る66%の削減率(2019年度比)
2つ目は2030年の電源構成として化石燃料を大きく減らし、太陽光発電を中心とした
再エネの比率を大きく増やす目標になっているということです。
さらにここにきて、大手電力各社が2022年5月分の電気料金から10社すべてが値上がりし、比較できる過去5年間で最も高い水準となっています。
これは、ウクライナ情勢の緊迫化などによる燃料のLNG(液化天然ガス)や石炭などの輸
入価格の上昇が主な要因と言われており、
太陽光発電で創エネを!
住宅の断熱性能を高め、エネルギーコストの低減を!
という声も多くなってきているようです。
※(出典) 2022年5月 総務省統計局 『小売物価統計調査』
・2050年カーボンニュートラル(2020年10月26日 菅首相所信表明演説)
温室効果ガスの排出を全体としてゼロ
・2030年度の新たな温室効果ガス排出削減目標 (2021年4月22日 気候変動サミット)
温室効果ガスを2013年度から46%削減
更に、50%の高みに向け、挑戦を続けていく
この発信を受け、各省庁から以下の方針がでています。
・脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策等のあり方・進め方
(令和3年8月23日 脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会(事務局:経済産業省、国土交通省、環境省))
・2050年に目指すべき住宅・建築物の姿
(省エネ)ストック平均でZEH・ZEB基準の水準の省エネ性能が確保される
(再エネ)導入が合理的な住宅・建築物における太陽光発電設備等の
再生可能エネルギー導入が一般的となる
・2030年に目指すべき住宅・建築物の姿
(省エネ)新築される住宅・建築物についてはZEH・ZEB基準の水準の
省エネ性能が確保される
(再エネ)新築戸建住宅の6割において太陽光発電設備が導入される
ということで、2030年の目指すべき姿を実現するために、今年度から省エネ、再エネの
推進が強化されています。
※ 脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策等のあり方・進め方 別紙1より一部抜粋
ここで、着目しなければならないのが、「住宅性能表示制度における多段階の上位等級の
運用」です。新しい住宅性能表示制度における基準が、品確法では、「5-1 (断熱等性能等級) 」に上位等級の等級5・6・7が新設。選択項目だった 「5-2 (一次エネルギー消費量等級) 」が2022年10月に必須項目となるということです。
※令和4年(2022年)10月1日以降
※1 : 省エネ法に基づき平成4年に定められた基準
※2 : 省エネ法に基づき昭和55年に定められた基準
※3 : 建築物省エネ法に基づき省エネルギー性能の向上の一層、の促進のために誘導すべき基準(省エネ基準の一次エネルギー消費量
から10%削減したもの)
※4 : 基準一次エネルギー消費量に対する設計一次エネルギー消費量の割合(その他の一次エネルギー消費量を除く)
※5 : 太陽光発電設備によるエネルギー消費量の削減は見込まない
※(出典)2022年7月5日 日本木造住宅産業協会 資材流通委員会 セミナー 『カーボンニュートラルに向けた住宅の高断熱化』より
それでは、新設された等級5、6,7とはどのような水準になるのでしょうか。
以下の表でみると、等級4(H28年省エネ基準相当)から比べると、東京で北海道並みの断熱性能を求められることになります。
室内温度の目安、お施主様の感覚に例えると、例えば等級6では冬でも毛布1枚で大丈夫!
そんなおウチになるというところでしょうか。
因みに等級4は2025年義務化予定です。
我々は等級5・6・7にするにはどういう仕様にすればいいの?となると思います。
以下に6地域での仕様例をご紹介します。
※ 2022年8月18日 YKKAP A-PLUG 『Live Stream Forum 2022』より
等級5にするには、天井を高性能グラスウール16K 200㎜に、外壁を高性能グラスウール16K 100㎜に床を押出法ポリスチレンフォーム 保温板3種 90mmに、窓はアルミ樹脂複合窓(Low-E複層ガラス)となります。
等級5から6にするには樹脂窓(複層ガラス)を採用することで対応可能に。
等級5から 7は 樹脂窓(トリプルガラス) と 外壁の断熱強化で対応が出来ます。
こちらの表をみてください。住宅性能表示 省エネ基準と補助金・税制優遇の関係を表したものです。(2022年1月時点)
今まで、各補助金・税制優遇は断熱等級4を基準としていましたが、この2022年10月からは、断熱等級5を基準に変わっていきます。
※2025年には省エネ適合義務化(=断熱等級4必須)となります。
この動きに呼応してか、大手ハウスメーカーさんやパワービルダーさんはZEH標準化を次々に発表しています。
・某鉄骨系大手ハウスメーカーのSさんが「ZEH最上位等級仕様」を戸建・賃貸で4月1日から標準化。ZEH水準の「断熱等性能等級5」、「一次エネルギー消費量等級6」に対応。
・某木造系大手パワービルダーのHさんでは 4月より断熱等性能等級5、一次エネルギー消費量等級6をプロモーション展開これは、今回の省エネ基準の新設と補助金・税制優遇の動きをにらんでの動きと思われ、
今後市場に、ZEH水準が一気に拡大していくと思われます。
さらに、車業界では「2035年までに乗用車の新車販売を電動車100%(ハイブリッド車、燃料電池自動車含む)」もあり、V2H(*)の提案も重視されていくと思われます。
※V2H:クルマ(Vehicle)から(to)家(Home)へ」を意味するこの言葉。
電気自動車に蓄えられた電力を、家庭用に有効活用する考え方のこと。
これらの動きを考えますと、断熱等級5(ZEH水準)は当たり前(最低基準)、断熱等級6が標準にというマーケットになっていくと思われます。
これまでの住宅業界を性能と価格を軸に分布にしてみると、こんな感じだと思われます。
これまではそれぞれの分野で強みを発揮し、受注活動をされていたのですが、
断熱基準の義務化、資材高騰により住宅価格のアップという流れを受け
高価格・高性能にシフトしていくと予想されるため、地場ビルダー・工務店様は
この右上のポジションで戦える、差別化できる仕様作りが必要になります。
1項でも触れましたが、「2050年までにカーボンニュートラル」「2030年温室効果ガスを2013年比46%削減」を実現するために、高性能な住宅を建ててもらう後押しとして、税制優遇、金利優遇、補助金を用意されており、これをしっかり活用していく必要があります。
2021年12月10日、与党が2022年度税制改正大綱を決定。住宅ローン減税に関しては、控除率、控除期間等を見直すとともに、環境性能等に応じた借入限度額の上乗せ措置などを講じた上で、適用期限を4年間延長することが決まりました。
皆さんもご存じかと思いますが、2024年度以降、省エネ基準を見たない住宅の場合、住宅ローン控除の対象外となります。
※右表の( )内の金額は、借入限度額(対象となる年末ローン残高)。上段は最大控除額(控除期間合計分)
※1 2023年までに新築の建築確認の場合⇒控除上限額140万円(2,000万円)、10年
※2 「買取再販」は、既存住宅を宅地建物取引業者が一定のリフォームにより良質化した上で販売する住宅を指す。
※3 「その他」は、省エネ基準に満たない住宅のことを指す。
※4 既存住宅の築年数要件(耐火住宅25年以内、非耐火住宅20年以内)については、「昭和57(1982)年以降に建築された住宅
(登記簿上の建築日付が1982年1月1日以降の家屋)」(新耐震基準適合住宅とみなす)に緩和。⇒築40年程度の木造戸建てでも「ローン減税の対象になる」と認められた
<こともみらい住宅支援事業>
令和4年度予備費等:600億円
※1 注文:工事請負契約、分譲:売買契約
※2 完了報告期限までに省エネ住宅の新築工事全体が完了していない場合は、補助金返還の対象
※出所:2022年4月28日 国土交通省 Press Release 『「こどもみらい住宅支援事業」の申請期限を令和5年3月末まで延長します!』
<地域型住宅グリーン化事業>
4年度本予算:200億円の内数
地域における木造住宅の生産体制を強化し、環境負荷の低減を図るため、資材供給、設計、施工などの連携体制により、地域材を用いて省エネ性能等に優れた木造住宅(ZEH等)の整備等対して支援を行うもの。
<令和4年度 3省連携事業 ZEHの推進に向けた取り組み>
※ (出典) 2022年3月30日 国土交通省 『ZEH、LCCM住宅関連事業(補助金)について 令和4年度 3省連携事業パンフレット』一部抜粋
【フラット35】S (住宅金融支援機構)
令和4年度当初予算:優良住宅整備促進等事業費補助(269.77億円)の内数
住宅の性能等と金利引下げの関係について、利用者に分かりやすい制度とするため、フラット35の金利引下げ制度を見直し、ポイント制を導入
現在の資源高・資材高は、残念ながら住宅価格の高騰につながっています。
さらに省エネ性の向上、耐震性の向上は、さらに住宅価格を押し上げる要因となり、お施主様の予算もオーバーしかねません。しかし、住宅ローンの審査が通過するのであれば、高性能な住まいを手に入れるべきです。
仮に、住宅ローン審査が通らない程の予算オーバーであれば、延床面積を減らしてでも高性能な住まいを手に入れるメリットは大です。
改めて、高性能な住宅を建てるための国の支援策を纏めますと
① 補助金によるメリット
• こどもみらい住宅支援事業 : 100万円(ZEH等)
• 地域型住宅グリーン化事業 :140万円(認定長期優良住宅、ZEH)
• 戸建住宅ZEH化等支援事業 : 55万円
② 住宅ローン減税によるメリット
• 長期優良住宅 : 455万円(最大控除額)
• ZEH水準省エネ住宅 :410万円(最大控除額)
⇒現実的には、中間層(年収600万円)が実際に受けられる減税の恩恵は : 300万円
③ 【フラット35】Sで、ZEHかつ長期優良住宅の場合、10年間0.5%金利引下げで : 145万円
④ ZEH建設後の光熱費等の経済的メリット : 13,258円/月×12カ月×35年間=557万円
※算出根拠:サイト内ダウンロード資料「お客様向けZEH説明資料」より
【ZEH】ZEH カーボンニュートラルとは
また、直接的な金額メリット以外としても
⑤ 2030年以降、省エネ性能/誘導基準が義務化された後も、住まいの資産価値が落ちない
⑥ 地震+極端気象+COVID-19の複合災害への備えは、「在宅避難」が王道
なにより、快適・健康・安全な住まいとなるのは確かです。
いかがでしたでしょうか?
これまでも建築物での省エネ、創エネの取り組みについては様々な方針が出ていましたが、
なかなか浸透していませんでしたが、2020年の菅内閣総理大臣の所信表明演説を皮切りに、
政府も本気の方針を出しており、近い将来、断熱等級6・7=高性能な住宅=ZEHを建て
ない工務店様は生き残れない時代が確実に来ると思われます。
ZEHにまだ取り組まれていらっしゃらない工務店・ビルダーの皆様はこれを機会に、
ZEHについて理解していただき、今後の提案活動に活かして頂ければと思います。
断熱等級、断熱性能、ZEH、こどもみらい補助金、フラット35S、グリーン化事業に
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