本記事では、BELSと住宅性能表示制度の違いを解説します。
BELSとは、建築物の省エネルギー性能を評価し表示する制度です。
BELS(ベルス)は、「Building-Housing Energy-efficiency Labeling System」の略称で、
国土交通省の管轄で平成25年10月に示した「非住宅建築物に係る省エネルギー性能の表示のための評価ガイドライン(2013)」に基づき、平成26年4月より非住宅建築物むけに開始された制度です。
その後、平成28年の建築物省エネ法において、
建築物の販売・賃貸事業者に対してエネルギー消費性能を表示する努力規定がもりこまれ、
これをきっかけに消費者向けによりわかりやすく、省エネ削減率をラベリングで表現した制度として
「住宅版BELS評価制度」がスタートしました。
BELSは省エネ性能を★でラベリングすることで消費者にわかりやすく表現しています。
BELSのラベリングは「★」の数で示され、最高ランクは「★」5つで表示される5段階評価になっています。
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資料提供:住宅性能評価機関 ㈱住宅あんしん保証
5段階評価の方法は、評価対象の建築物が排出する「一次エネルギー消費量」を設計的に算出します。
この一次エネルギー消費量とは、人がその住宅で生活するうえで消費されるであろうエネルギーの総量のことです。
住宅に設置されている暖房や冷房、24時間換気設備、給湯設備、照明設備の種類に応じて
「住宅に関する省エネルギー基準に準拠したプログラム」へ内容を入力すると、
その住宅の年間の一次エネルギー消費量が算出されます。(設計一次エネルギー消費量)と呼びます。
この「設計一次エネルギー消費量」が、
建築物省エネ法として許容している最大量「基準一次エネルギー消費量」と比べ、同量なのか、
それともずっと少ないのか、比率を算出することで省エネ性能の高さを評価しています。
この比率をBEI(Building Energy Index)と呼んでいます。
このBEI値が1.00(法律と同量)であれば省エネ基準に適合(法律ギリギリの状態ではあるが)、
1.00よりも小さいほど省エネ基準よりもエネルギーの排出が少ない優れた省エネ住宅であるといえます。
建築物省エネ法においては、まずは最低基準でもある省エネ基準をBEI値(比率)1.00以下であると定めています。
また、今後国がカーボンニュートラルを促進するにあたりさらに目指すべき水準の目安として
「省エネ性能の向上の促進を誘導すべき基準(誘導基準)」をBEI値が0.80以下であると定めています。
BELS評価書における★の数ラベリングは、BEIの数値に応じて「★」の数が決まっています。
詳細は以下の通りです。
またこのBEI値を1から引いて100をかけた数字を「削減率」といいます。
削減率は値が大きいほどエネルギー消費が少ない優れた省エネ住宅となり、
BELS評価書ではBEI値と並んで記載されます。
削減率=(1-BEI)×100
例: BEI=0.80、削減率20%
BEI値が小さいほど削減率が高くなり、
どのくらい省エネ性能を高めた設計になっているのかの度合いを、消費者に伝わりやすくなります。
省エネ性能の高さをアピールしたい住宅会社は、
完成物件の削減率がいつもどのくらいになっているのかを確認してみると良いでしょう。
なお、BEIは、住宅性能表示制度の等級判定とひもづけされています。
住宅性能評価制度では、
BEI値が1.00以下~0.90未満の住宅は一次エネルギー消費量等級4と評価してもらえます。
BEI値が0.90以下~0.80未満の住宅は一次エネルギー消費量等級5になり、
BEI値が0.80以下の住宅は一次エネルギー消費量等級6と評価されます。
もし、太陽光など再生可能エネルギーがある場合は、
設計一次エネルギー消費量の算出時に創エネによる自家消費相当量を引くことができ、
太陽光発電システムによりたくさん発電する住宅ほどBELSで表示される削減率は大きくなります。
一方、住宅性能表示制度の判定における一次エネルギー消費量等級6の評価では、
太陽光など再生可能エネルギーの自家消費相当量を含めないでBEIを算出して判定するきまりになっています。
従って住宅性能表示制度としての等級評価では、
太陽光発電システムがあれば即一次エネルギー消費量等級6と評価されるわけではありません。
(住宅性能表示制度では太陽光の評価は限定的)
また、その太陽光のある住宅が「ZEHかどうか」は、
経産省が別に定めたZEHの定義に適合するかどうかになるので、
ZEHと言えるどうかはBEIの値のみでは判別できない点に注意が必要です(後述します)。
BELS評価で表示されるもう1つの指標は、「外皮の性能」です。
外皮とは外気と室内の境界を指し、建築物においては主に外壁や屋根などに設置された断熱材や窓そのものを指します。
省エネ住宅は断熱性能が高い住宅とよく言われますが、
この断熱性能とは「外皮の断熱性能」が数値としてどれくらいの値なのかによります。
外皮の断熱性能は、主に「外平均熱貫流率(UA値)」で判定でき、
外皮総熱損失量/外皮総面積という計算によって求めることができます。
性能として計算対象にできるものはサッシと断熱材です。
省エネ基準では、その住宅の建築地の気候を考慮した上で達成しなければならないUA値が、
法律で定めれています。
たとえば沖縄県(8地域)はUA値の定めはなく(断熱性能は不問)、
北海道(1地域)はUA値を他の県よりいっそう厳しく設定されています。
北陸地域の場合は4地域または5地域または6地域が該当しますが、
その場合の省エネ基準UA値は0.87以下と定められています。
BELS評価書ではその住宅について実際に計算した外皮性能UA値を数値で表示するとともに、
省エネ基準に対して「適合」なのか「不適合」なのかを表示することができます。
一方の住宅性能表示制度は、2000年に施行された品確法で定められた、
住宅の性能をさまざまな点で総合評価する制度です。
BELSと住宅性能表示制度には、「対象の建築物」・「評価項目」・「評価の仕組み」に違いがあります。
3つの異なる点について詳しくご紹介します。
BELSでは、住宅に加えて非住宅の建築物も対象ですが、住宅性能表示制度は住宅のみを対象に評価しています。
品確法=住宅の品質確保を促進等に関する法律なので対象は住宅のみだからです。
BELSと住宅性能表示制度とでは、評価項目が異なります。
BELSは省エネルギー性の評価のみですが、
住宅性能表示制度は、必須項目4分野を含む全10項目の幅広い視点から、
総合的に住宅を評価してもらうことができます。
住宅性能表示制度の必須4項目を含む全10項目は以下の通り。
①の構造の安定、つまり耐震等級を評価できる点が本制度の最大の特徴です。
耐震等級の証明書が欲しい場合は、この「住宅性能評価制度」で証明してもらいましょう。
また⑤はBELSと同じく省エネルギー性能を評価してもらえますが、
省エネ性とは住宅の性能の1つでしかないことがこの制度を知ったらわかることでしょう。
住宅を総合的に判定するという点がBELSとは大きく異なっています。
BELSは、設計図書に基づいた設計内容の評価です。竣工時にどうなったかは考慮していません。
一方、住宅性能表示制度では、
①設計段階での評価である設計住宅性能評価と、
②竣工時の建設住宅性能評価の2段階で構成されています。
②は設計内容どおりに工事が進められたかどうかを現場検査を追加することによって現地確認した上で再評価する、実績ベースの評価制度です。
<手続き方法>
まずは登録評価機関において
①設計住宅性能評価を申込みます。
上記必須4項目について設計図書を元に審査を受け、
項目別に等級を判定してもらった「設計住宅性能評価書」を取得します。
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その後、同じ評価機関に
②建設住宅性能評価を申込し、現場検査を合計4回受けます。
1回目:基礎配筋工事完了時
2回目:上棟時
3回目:内装下地張り直前の工事完了時
4回目:竣工時
現場検査4回実施後に「建設住宅性能評価書」という評価書が、再度発行されます。
このように、評価の内訳が2段階になっている点もBELSとの大きな違いでしょう。
なお②建設住宅性能評価は任意です。①の設計住宅性能評価のみの申込も可能です。
本制度は「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」において新しくつくられたしくみです。
この法律は「国民が良質な住宅を安心して取得できる市場づくり」が制定目的となっています。
国民が質の高い住宅を安心して購入するにあたって、
住宅性能表示制度は、品質の総合評価のしくみと、現場検査で品質を担保させるしくみが柱となっている、
良い住宅を求める国民にとって「最適な制度」であると国は考えているのです。
お客様は、住宅会社のレベルや現場施工の良し悪しを契約前に判断できません。
日頃、欠陥住宅などさまざまな情報に不安を感じている消費者ほど、
住宅性能評価制度に興味を持つ傾向があると思います。
お客様が「住宅性能評価制度」を最初から要望してきたら施工品質を不安視しているのかもしれません。
その場合は設計住宅性能評価だけでなはく現場検査もある建設住宅性能評価の利用も最初から想定しておいた方が良いでしょう。
住宅性能表示制度では建築住宅の耐震性について、耐震等級1~3の判定が可能です。
地震の多い日本では住宅の建築の際に耐震性能を気にする建築主が増えています。
北陸においても耐震等級を重視したすまいづくりが増加傾向にあります。
その場合、構造の具体的な検討(構造計算など)を実施して建築するだけではなく
「住宅性能評価書」で耐震等級の公的な証明書も用意するほうが良いでしょう。
お客様は耐震性能を求めた時に「証明書も欲しい」とはっきり言いません。
建築業者のみなさまを信用しているからこそ、そのような保証書的なものは最後に当然もらえるだろうと
一方的に考えているのです。
その点、実績ベースの「建設住宅性能評価書」も欲しい場合は
竣工後には対応できないので注意しましょう。
手遅れにならないよう着工前にどこまでを求めているのかしっかり説明し意思確認しておきましょう。
さて、ZEHの証明書として適しているのは
「BELS」でしょうか?
「住宅性能表示制度」でしょうか?」
ZEHの評価の方法ですが、
まず、BELSではZEHであることをZEHマークによって表示します。
ZEHマークには、ランク別に『ZEH』『Nearly ZEH』『ZEH Oriented』の3種類あります。
「ZEH」は2014年に経産省で定義づけられました。
評価内容についてはその後2020年にかけてたびたび改定され、
その過程で戸建住宅の場合の「ZEH」は現在名称が3種類に増えています。
ZEHの3種類の判定のための評価内容は以下の通りです。
※再生可能エネルギーの対象は敷地内(オンサイト)に限定し、自家消費分に加え、売電分も対象に含める。
(ただし余剰売電分に限る。)
※再生可能エネルギーに係る設備については、所有者を問わず当該住宅の敷地内に設置されるものとする
※なお、経産省は2019年に「自家消費型モデル」普及のため「ZEH+」「NearlyZEH+」という
ZEHの上位シリーズを2つ増やしていますが、国交省管轄のBELS表示制度では評価対象としていないので
本コラムでは省略します。
ZEH+もふくめた定義について詳細はこちら(別コラムページ)
さて、前項にて太陽光のある住宅が「ZEHであるかどうか」の判定は、
一次エネルギー計算書の計算結果BEIの数値のみでは判別できず、
別途、経産省の定めたZEHの定義に適合するかどうか確認が必要と記載しました。
つまり上記のZEHの評価内容の①②③④⑤を1つずつ確認する必要があるからです。
BELSの審査過程では、①②③④⑤を確認しています。
認められれば該当するZEHマークをBELS評価書に表示してもらえるので、BELSはZEHの公的な証明書になるのです。
上記定義①②③④⑤において、再生可能エネルギーを含めた削減率が評価内容になっていますが、
実は住宅性能表示制度では必ずしも評価していません。
住宅性能表示制度では、一次エネルギー消費量等級6と評価する場合は、
再生可能エネルギーを除いた削減率で評価します。=上記定義の②を評価。
しかし③と④と⑤は評価していないのです。
従って『ZEH』『Nearly ZEH 』『ZEHOriented』の証明書は、
住宅性能表示制度では不完全なので、BELS評価書のみが証明書として有効ということになります。
なお、補助金などでは補助対象とするZEHの要件として
ZEHの種類も特定しなければならないタイプの補助金(狭義のZEH=BELS評価書必須)と、
ZEH水準相当の住宅を支援対象として認めているタイプ(広義のZEH=住宅性能表示制度も可)と、
利用したい支援制度ごとに異なりますので、申請時に何を証明すれば良いのかを
マニュアルで確認してから申請する表示制度を選択し、申請するようにしましょう。
経産省と国交省は、これまでそれぞれの管轄内で創作した用語で省エネ住宅のモデルをつくってきたため、
ZEH相当の住宅を指す用語が省によって表現が異なりやや複雑に感じることがあります。
当サイトで経産省と国交省(BELSと住宅性能表示制度)別の関係図を作成してみましたので
参考にしてください。
BELSと住宅性能評価制度を比較してみましたがいかがだったでしょうか。
住宅の省エネルギー性能を評価し証明してもらう制度には、現在BELSと住宅性能表示制度の2つがありますが、どちらも住宅の性能を明確に消費者に伝えることができる点は同じ仕組みです。
太陽光発電システムが搭載されているなど
ZEHの種類をもはっきりアピールしたい場合は「BELS」がおすすめです。
また、太陽光発電システムが搭載されていなくても、
BELS評価は住宅の省エネ性能を消費者にわかりやすく表示することが目的の制度なので、
住宅の販売時には積極的にBELSのラベリング表示を見せて、性能の高さをアピールするとよいでしょう。
また、お客様から事前に性能についての要望があった場合には「住宅性能表示制度」を活用しましょう。
「建設住宅性能評価書」も取得すれば、契約内容として約束した省エネ性能で建築・竣工したことの
第三者証明となり、新築当時のすまいの成績表として建築後も活用できるものになるでしょう。
北陸新築リフォーム補助金ナビでは、
新築住宅を建築する事業者のみなさまの住宅の性能についての技術的なご相談や、
「BELS」または「住宅性能表示制度」の申請サポートを行っています。
くわしくは当サイトまでお問い合わせください。
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