地球温暖化問題など、環境への意識が高まるなか「低炭素住宅」が注目を集めています。
この低炭素住宅は、補助金など様々な優遇を受けることができますが、具体的にはよくわかっていないという方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は低炭素住宅について、メリット・デメリットを交えながら解説していきます。
【目次】
1. 低炭素住宅とは
2. 低炭素住宅の基準
3. 低炭素住宅の認定取得の7つのメリット
4. 低炭素住宅の認定取得の3つのデメリット
5. まとめ
そもそも、低炭素住宅とはどのようなものなのでしょうか?
低炭素住宅とは、二酸化炭素の排出を抑えられるように設計された、環境に優しい住宅のことを指します。
近年、地球温暖化などの環境問題が深刻になっています。
この地球温暖化の原因の一つと言われているのが二酸化炭素です。
社会経済活動を進めるに伴って多くの二酸化炭素が排出されており、社会全体として低炭素化に向けた取り組みを、迅速に進めていくことが重要な課題となっています。
こういった、低炭素化を促進していくことによる持続可能な社会の実現を目指して、平成24年12月に「都市の低炭素化の促進に関する法律」(エコまち法)が施行されました。
この「エコまち法」により、新たにスタートした制度が「低炭素建築物認定制度」になります。
この「低炭素建築物認定制度」で、都道府県または市(区)から住宅が低炭素住宅と認定されることによって、様々な優遇措置を受けることができるというメリットがあり、非常に注目を集めています。
低炭素住宅ですが、優遇措置を受けるためには、基準を満たし、都道府県または市(区)から認定を受けなければなりません。
低炭素住宅の認定を受けるためには、下記の3つの基準を全て満たす必要があります。
①省エネルギー基準を超える省エネルギー性能を持つこと、かつ低炭素化に資する措置を講じていること
②都市の低炭素化の促進に関する基本的な方針に照らし合わせて適切であること
③資金計画が適切なものであること
そしてさらに①の項目に関しては、認定基準が大きく下記の2つに分かれています。
ⅰ定量的評価項目
ⅱ選択的項目
それぞれについてもチェックしていきましょう。
ⅰ定量的評価項目
一つ目は定量的評価項目です。
この項目は、低炭素住宅の認定を受けるために必ず満たさなければならない基準であり、「外皮の熱性能」と「一次エネルギー消費量」について規定されています。
・外皮の熱性能
この項目では、省エネルギー法で定められる省エネルギー基準と同等、もしくはそれ以上の断熱性・日射遮蔽性が確保されていることが必要となります。北陸地域の5地域・6地域の場合は、断熱性能等級5が必須になります。
・一次エネルギー消費量
この項目では。省エネルギー法の省エネルギー基準よりも、一次エネルギー消費量が20%以上削減できていることが必要となります。つまり一次エネルギー消費量等級6が必須になります。
それぞれの詳細な基準を知りたいという方は、下記をクリックしてご確認ください。
出典:国土交通省の低炭素建築物認定制度パンフレット
https://www.mlit.go.jp/common/000996590.pdf
ⅱ選択的項目
次に選択的項目についてです。
この項目では、下記の住宅の低炭素化のための措置のうち、2つ以上を選択し、それを満たす必要があります。【注意:2022年10月認定基準みなおしにより、太陽光発電システム等の再生可能エネルギー利用施設の採用が必須となりました。また、選択項目は2つから1つに変更となりました】
《節水対策》
①節水に役立つ機器を設置している(食洗機の設置と水栓と便器の半分が節水に資する機器であること、など)
➁雨水・井戸水、または雑排水を利用するための設備を導入している
<エネルギーマネジメント>
➂家庭で使用するエネルギーを節約するための管理システムである、「HEMS(Home Energy Management System、ホームエネルギーマネジメントシステム)」を設置している
➃太陽光などの再生可能エネルギーによる発電設備と、それに連係した定置型の蓄電池を設置している
<ヒートアイランド対策>
➄敷地・屋上・壁面の105以上が緑化されているなどの、一定のヒートアイランド対策が行われている
<建築物(躯体)の低炭素化>
⑥住宅の劣化を軽減する措置を講じている
⑦木造住宅、木造建築物である
⑧構造耐力上主要な部分に、高炉セメントまたはフライアッシュセメントが使用されている
<再生可能エネルギーの自家消費活用>
【注意:2022年10月認定基準みなおしにより、選択項目に追加されました】
⑨V2H充放電設備の設置(電気自動車に充電可能とする設備を含む)
こちらに関しても、より詳細な内容については下記をチェックしてみてください。
出典:国土交通省の低炭素建築物認定制度パンフレット
https://www.mlit.go.jp/common/000996590.pdf
ここまで、低炭素住宅の認定基準などについて説明してきましたが、実際に低炭素住宅の認定を取得することにより、どのようなメリットがあるのでしょうか?
ここからは、低炭素住宅の認定を取得するメリットについて紹介していきます。
①税金が優遇される
一つ目は税金の優遇です。
低炭素住宅の認定を取得すると、住宅ローン減税や、投資型減税、登録免許税における優遇を受けることができます。
例えば、住宅ローン減税に関してですが、低炭素住宅の認定を取得している場合、10年以上の住宅ローンを組んで住宅を取得した場合に利用できる「住宅ローン減税」において、控除対象借入限度額が一般住宅よりも拡充されます。
つまり、一般住宅では4,000万円となっている控除対象借入限度額が、低炭素住宅の認定を取得している場合では5,000万円にアップするため、10年間の最大控除額が一般住宅より100万円多くなるということになります。
このように、税金における優遇措置を受けることができるというのは、大きなメリットになると言えるでしょう。
②低金利で住宅ローンを組むことができる
二つ目が住宅ローンに関してです。
低炭素住宅の認定を取得すると、「フラット35S(金利Aプラン)」という制度を利用することができるようになります。
この「フラット35S(金利Aプラン)」とは、「フラット35」を利用して、省エネルギー性などを有する質の高い住宅を取得する際に、借入金利を一定期間軽減することができるという制度のことです。
低炭素住宅は、この制度のうち、「省エネルギー性」の利用基準を満たすことになるため、住宅ローンの最初の10年の金利を基本金利から▲0.5%となるように、引き下げて利用することができます。
11年目以降は通常の金利に戻ってしまいますが、それでも10年間金利を引き下げて利用できるというのは、低炭素住宅の認定を取得するメリットとなるでしょう。
③容積率の緩和措置が取られる
三つ目は、容積率の緩和です。容積率は、敷地面積に対して建築する建物の延べ床面積の割合についての制限のことになります。
この容積率は、都市計画によって上限が設定されており、どれだけの大きさの住宅を建てても良いのかを土地ごとにあらかじめ定めておくしくみです。
低炭素住宅では、太陽光発電システムを設置する必要がありますが、認定住宅の屋根に限らず、庭や車庫の上への設置なども認められます。
そして、この太陽光発電システムの設備に必要な構造物であれば、延べ床面積の20分の1が限度ではありますが、通常の建築物の床面積を超える部分については容積率に算入しないとする緩和措置を受けることができます。
敷地に対して住宅を広く設計することができるようになる点は、メリットと言えるでしょう。
④快適に生活することができる
四つ目は、快適に生活することができるという点です。
認定低炭素住宅は2022年10月の認定基準みなおしにより、建物はほぼZEHやNearlyZEHと同等のレベルである断熱性能等級5かつ一次エネルギー消費量等級6が必須です。
強化外皮基準を満たしているため、標準的な省エネルギー住宅以上の高い断熱性を備え、また窓にはLOW-E遮熱ガラスの採用により太陽光による室内温度上昇を抑える日射遮蔽性も備えているのが低炭素住宅ということになります。
そのため、冬場は「断熱」で室内の暖気を外に逃さずに、夏場は「日射遮蔽」で外の熱気を防いで涼しく過ごすことが期待できるでしょう。
このように、コスト関係だけでなく、住環境を整えることができるという点でも、低炭素住宅は魅力的と言えるでしょう。
⑤月々の光熱費などのコストを抑えられる
五つ目は、光熱費などにかかるコストを抑えられるという点です。
認定低炭素住宅は太陽光発電システム採用が必須なので、日中は屋根で発電して作った電気を住宅内で使用する自家消費により、電力会社から購入する電気量を大幅に削減することができます。
また、一つ前の項目でもお伝えした通り、低炭素住宅は質の高い住宅であり、高い断熱性能と日射遮蔽性を備えています。
そのため、夏は涼しく、冬は暖かいという環境を整えることができるため、自然と冷暖房に関するコストを下げることができるようになります。
また、低炭素住宅の認定基準における選択的項目で、節水対策を選択した住宅であれば、キッチンや浴室、洗面所いずれかの蛇口、またはトイレが節水型になっているので、光熱費の他に、水道代のコストも抑えることができるでしょう。
実際に住み始めた後に、必然的に発生するインフラ関連のコストを抑えることができることも低炭素住宅のメリットになります。
⑥住宅の資産価値が高く評価される
六つ目は、住宅の資産価値という点です。
四つ目、五つ目でも紹介した通り、低炭素住宅の認定を取得しているということは、質の高い住宅であると認められていることでもあります。
そのため、一般的な住宅と比較すると、資産価値が高く評価される傾向にあります。
また、環境問題は今後も注目され続けていくことが予想されるため、価値が下がる可能性は低いでしょう。
将来的に、住宅を販売することを考えているのであれば、低炭素住宅は十分にメリットがあると言えるでしょう。
⑦補助金を利用できる可能性がある
七つ目は、補助金の活用です。
低炭素住宅の認定を取得すると、「地域型住宅グリーン化事業」の補助金対象となる可能性があります。
この「地域型住宅グリーン化事業」とは、国土交通省が実施している、低炭素住宅や長期優良住宅などといった、省エネルギー性や耐久性などに優れた良質な木造住宅を、新築・改修する際に補助金が交付されるものになります。
低炭素住宅でこの補助金が適応された場合、1戸あたり90万円を上限として補助金を受けることが可能になります。(令和4年8月時点)
ただし、一つ注意しなければならないのは、この「地域型住宅グリーン化事業」の補助金を受けられるのは、あらかじめ国に採択された施工事業者グループによって建築される住宅のみであるという点です。
すべての住宅会社で受けることができる補助金ではないので、事前に確認するようにしましょう。
多くのメリットがある低炭素住宅ですが、もちろんデメリットも存在します。
これから紹介するデメリットについても事前にしっかり確認しておきましょう。
①設備にコストがかかる
一つ目は設備費用です。
低炭素住宅としての認定を取得するためには、省エネに特化した設備を導入し、認定基準を満たす必要があります。
一般的な住宅には必要のない設備であることもあるため、その分コストは高騰してしまうでしょう。
しかし、税金の優遇措置を受けることができたり、月々のインフラにかかるコストを抑えることができるということを考えれば、長期的には設備導入にかかるコストも解決できる問題であると言えるでしょう。
②「市街化区域」でないと申請できない
二つ目は、エリアによる問題です。
低炭素住宅は、原則として「市街化区域」内に建築される住宅でないと認定申請ができない決まりとなっています。
この「市街化区域」とは、「すでに市街化を形成している区域、および概ね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」と都市計画法で定義されている区域になります。
そのため、低炭素住宅を検討する場合には、その住宅の建築予定の土地が市街化区域に指定されているかどうか、必ず事前に確認するようにしましょう。
③認定申請にコストがかかる
三つ目は、申請にコストがかかるという点です。
低炭素住宅は認定を受けるための申請にお金がかかります。
制度上、認定の申請者は建築主(施主)ですが、施主が低炭素住宅の申請に必要な書類をすべて用意し、各所への提出を行うということは少なく、実際は住宅メーカーに申請を代行してもらう、あるいは外部の代行サポート会社に依頼するというケースが多いです。
低炭素住宅の申請を代行してもらう場合には、申請費用の実費に追加して事務手数料が上乗せするので、20万円程の料金となることが一般的です。
もちろん、このコストも、税金の優遇など長期的に見ればクリアできるコストではありますが、認定取得のためにはこのくらいの諸経費がかかるということを事前に頭に入れておくこと良いでしょう。
いかがだったでしょうか?
低炭素住宅の認定取得には、税金の優遇や、補助金の活用など、様々なメリットがあります。
工務店にとっては、低炭素住宅について知っているかどうかが、受注を左右するという場面に遭遇することもあるかもしれません。
この機会に、低炭素住宅についての基本的な情報を理解し、今後の業務に活かしていただければと思います。
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