南陽吉久が運営する北陸新築・リフォーム補助金サポートナビ編集部です。
皆様いかがお過ごしでしょうか。
今回は能登半島地震をきっかけに工務店さまからのご質問・お問合せが増えている、耐震診断についてです。
地震による被害でご自宅に何らかの損害が出ているお客様から、耐震診断してほしいと相談があった際に、
私たち工務店はどのような対応をすべきでしょうか。本コラムで解説します。
耐震診断とは、旧耐震基準で建てられた建物などの既存住宅が、
震度6強などの大地震で倒壊しない耐震性(強さ)がどのくらいあるか耐震性の有無を確認することです。
基礎、壁、柱やその接合方法などがどのような状態なのか、建築年度も参考にしながら現地調査で目視で確認します。
判定には建築地の地盤の良し悪しや、積雪や屋根瓦など負荷がかかっているかどうか、
さらに雨漏りなどにより構造が傷んでいる部分があるかどうか、増改築の履歴なども考慮し判断します。
耐震診断の手法や基準としては、(一財)日本建築防災協会により発行された「2012年改訂版木造住宅の
耐震診断と補強方法」が国土交通省も認める指標となっており、現在の耐震診断の唯一の基準となっています。
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https://kenbokyo.jp/book/item.html?bid=56
耐震診断する人の資格要件は基本的にはありません。
(一財)日本建築防災協会では「耐震診断資格者講習」「耐震改修技術者講習」制度があり、
建築士資格者等が主な受講対象になっていますが受講そのものは任意です。
講習会の情報はこちら
https://www.kenchiku-bosai.or.jp/workshop/
民間団体でも(一財)日本建築防災協会のマニュアルに基づき独自の研修制度を行っているところもあります。
そちらでも耐震診断や耐震改修についての指標や技術を学ぶことは可能でしょう。
ただし、地方自治体が窓口となっている耐震診断や耐震改修の助成金制度によっては、
(一財)日本建築防災協会の講習受講者による耐震診断であることを、補助金の交付要件にしている場合が
まれにあるので、一度は(一財)日本建築防災協会の講習を受講しておくと良いでしょう。
少なくとも始めて耐震診断するのであれば、いずれかの団体の講習を受講し、
基本的な考え方と現地調査の手法についてしっかり学ぶ必要があるでしょう。
耐震診断は、使用済の既存住宅の現時点での耐震性を評価するものなので、
まずは現地調査を行い対象の建物の構造はもちろん、建築後に生じた劣化状態と耐震性への影響も調べる必要があります。
既存住宅は設計図書が揃っていないことが多いので、まずは平面図を作成する必要があります。
確認申請情報などから建築年数や床面積を確認し、現地では間取りと柱の位置を記録します。
それから建物の床下や天井裏にもできるだけ入り、壁の中に筋かいがあるかどうかや接合金物の種類なども
懐中電灯などで目視確認します。また、雨漏り跡や長年の湿気などで傷んでしまっている木材はないか同時に確認します。
このように、調査項目は、間取り・壁の材質・筋かいの有無・屋根の重さ・劣化状況(基礎のヒビ割れ・外壁の割れ・雨染み)など多岐にわたるため、現地調査は2時間ほどかかることが多いです。
現地調査後で収集した情報をもとに、耐震診断結果として「上部構造評点Iw値」という点数を算出します。
この上部構造評点は、「その家が本来持つべき強さ(必要耐力)」に対して
「実際に持っている強さ(保有耐力)」がどの程度あるのかの安全率をレベル判定しています。
そのため、既存住宅の現時点での耐震性の実力値をきちん判定するために、下記4点が重要になってきます。
<上部構造評点Iw値の算定に重要になる4つの評価>
・壁の量(強さ) 強い壁がどのくらいはいっているか
・壁の配置バランス 強い壁がバランスよく配置されているか
・柱と土台・梁の接合 柱と土台や梁がどのようにつながっているか
・劣化状況 腐っていないか、シロアリに食われていないか
旧耐震も含めた既存住宅の耐震診断でありながら、
2000年の基準法改正以降に始めて採用された壁の配置バランスや接合部の金物の種類も
判定に利用している点は、耐震診断が「震度6強の大地震」に対する倒壊の可能性を判定するものとして
有効な指標になるよう目指したものであり、建築後の劣化状態もマイナス要素として低減係数を
かけあわせることでより現実的な実力値を算出しようとしています。
そのため、耐震診断は既存住宅のためだけに考案された独自の評価手法であると言えます。
現地調査では主に上記4点を評価するために下記のようなことをチェックします。
①周辺状況
周辺家屋や塀などの傾きの状況、平坦な土地か傾斜地かどうか
②建物外観
屋根や外壁の材質が何か、外壁のひび割れの有無、樋の材質や劣化具合
③基礎
基礎コンクリートの配筋の有無、ひび割れや老朽部分の有無、コンクリート強度
④床下
土台など床下環境の湿気や腐朽の有無、シロアリやカビ被害、通気状況、筋交いの有無
⑤小屋裏
雨漏り跡の有無、通気状況、接合金物の有無、筋交いや火打ち、構造用合板の有無
⑥水廻り
床のたわみや腐朽、水漏れによる劣化の有無
⑦家の形状
建物の形状(真四角かL字型など形状の凹凸)、壁や床の配置、開口部の位置
また、上記をチェックするにあたっては、下記のような道具が必要になります。
・水平器(レーザーレベル)・・・柱が傾いていないか計測する機械です。
・鉄筋探知機・・・基礎に鉄筋が入っているか。また、その間隔を測定します。
・コンクリートテストハンマー・・・基礎の強さ(圧縮強度)を測定します。
・打診棒・・・外壁の割れや木材が腐っていないかなどをたたいて確認します
・含水率計・・・床下の木材に含まれる水分の割合(含水率)を測定しシロアリや腐食のリスクを確認できます。
・クラックスケール・・・基礎にひび割れがあった場合、その幅を測定するのに用います。
現地調査後は、耐震診断計算ソフトに調査結果を入力してIw値を計算します。
(一財)日本建築防災協会が販売しているものが代表的ですが、防災協会として他にも民間団体のソフトもいくつか認定しています。
リストはこちら
https://www.kenchiku-bosai.or.jp/evaluation/page-152/page-1100/
耐震診断結果報告書では、上部構造評点Iw値の点数を表示し、
調査依頼者に対して4段階のレベル判定で結果をお伝えする必要があります。
上部構造評点Iw値は「震度6強クラスの地震」に対する強さがどれくらいあるかの判定です。
計算結果のIw値が1.00以上であれば、震度6強クラスの地震発生時に「一応倒壊しない」と判断できます。
もしIw値が1.00未満であれば「倒壊する可能性がある」という判定になり、
Iw値が0.7未満であれば震度6強クラスの地震が発生時に「倒壊する可能性が高い」危険な建物であると言え、
早急に耐震改修をする必要があるでしょう。
日本では昔からより大きな地震が発生するたびに、人命を守る最低限の基準である建築基準法の内容を強化し、
見直ししてきました。
特に1981年以前の旧耐震の建物は、「震度5強程度」の中規模地震を想定した耐震基準であったので、
震度6強の大地震を想定しておらず、旧耐震の建物を上記手法で耐震診断計算してみると、
そのほとんどがIw値0.7未満の「倒壊する可能性が高い」という判定結果になります。
下記図表参照。
また、震度6強の大地震を想定するようになった1981年以降の新耐震基準の建物であっても、
当時は壁の配置バランスの規定や接合部の金物の規定、地耐力に応じて基礎設計する規定が無く、
実際に評点を算出してみるとIw値が1.00未満~0.7の「倒壊する可能性がある」という判定になるケースが
多いです。2000年以前に建てられた住宅つまり築23年以上の住宅も、耐震診断をきちんと受けて、
今後の大地震に対して現状どのくらいの耐震性があるか確認し、もし構造上の弱点部分があれば、
耐震補強工事を検討すると良いでしょう。
今回は耐震診断について解説しました。いかがだったでしょうか。
今回の震災により、耐震性への意識が高まっている中、防災協会の指標に基づいた耐震診断をせず、
むしろバランスが悪くなる場所に合板などで補強してしまうと、
他の業者から「悪質耐震リフォーム」と言われかねません。
また、耐震診断をしないと国の耐震改修補助金や耐震リフォームによる各種税制優遇制度も
対象外になってしまいます。
今後、お客様からリフォームのご依頼があった場合には、
建築年数に応じて必要であれば耐震診断と耐震改修も提案しましょう。
もし住宅全体をIw値1.00以上に耐震改修するのであれば、旧耐震であれば県の補助金が活用できます。
新耐震住宅の場合は国土交通省の補助事業である「長期優良住宅化リフォーム推進事業」がおすすめ。
補助額上限が250万と高額な補助金ですが、増改築版の長期優良住宅認定を取得する必要があります。
当サイトでは「耐震診断」は直接お引き受けいたしておりませんが、
耐震改修時に活用可能な補助金の情報や、上記でご紹介した「長期優良住宅化リフォーム推進事業」申請サポートも
可能ですので興味がある方はお気軽にご相談ください。
補助金一覧はこちらから
https://hokuriku-hojyokin.jp/document/310/